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2020.03.19

対談 Green Dialogue vol.12 (前編)

環境保全、環境教育などを通して社会貢献に取り組むさまざまなスペシャリストに、弊社代表の三枝 亮が話を伺う「Green Dialogue」。第12回目のゲストは、自然化粧品・自然食品の販売を手掛ける株式会社ニールズヤード レメディーズ社長の梶原建二さんです。美しさに健康と環境を直結させた製品の販売を通して、真に豊かなライフスタイルを推進しています。創業者との出会い、大切にしている「疑わしきは扱わず」の精神や、気候変動に関するセミナーを無償で続ける思いについてお話を聞きました。(撮影:Yoshihiro Miyagawa)
株式会社ニールズヤード レメディーズ社長の梶原建二さん

――梶原社長とニールズヤード レメディーズ(以下ニールズヤード)の出会いについて教えてください。

 

梶原さん:創業者ロミー・フレーザー女史との出会いは35年前に遡ります。イギリスで、知人の紹介で出会いました。当時イギリスでは環境汚染が問題になっており、もともと教師だった彼女は、健康と環境は密接に結びついているのではないかと思ったそうです。それで、健康と環境を一緒に取り扱えるような、もっと身近な製品をつくりたいと立ち上げたのがこのブランドです。

ロミーはもともとヒッピー、自由人だったと思います。イギリスの文化は音楽、芸術すべて、個を大切にしますから、人と違っていることをするのがいいと考えています。クリエイティブは集団から生まれないと思っているし、人と違うことをやってこそ、それが自分自身の証であると考えるカルチャーです。日本とは非常に違いますよね。イギリスにはそれを受け入れる土壌がある。新しいことをやる人に対して周囲の理解がある国です。

 

――イギリスって、ファッションや音楽をみてもすごく時代の先を行ってます。全然コンサバじゃないですよね。

 

梶原さん:イギリスには10年住みましたが、実はすごく革新的ですよ。一見コンサバティブに見えますが、違いますね。日本とはライフスタイルが全く違います。日本人に便利さを聞くと、駅の近くにコンビニがあったり、電車が時刻通りに来たりすることだと答えます。この便利さが豊かさに関係すると考えています。でも、イギリス人は、不都合のなかで、工夫する生活が豊かさだと思っています。私自身、イギリスの生活に自分をアジャストするのに初めは苦労しました。

対談はニールズヤード レメディーズ表参道本店で行われた

――そんな中で、ロミーさんに会われた時、何か強烈にフィットする、共感することがあったのですね。35年というと、日本はバブルの絶頂期。梶原さんは、そんな時代に環境を意識したビジネスをはじめられた。思い返してみても、その頃の日本で、環境を考えていた人なんて、少なくとも私の周りにはいなかったですよね。

 

梶原さん:そうですね、考えたこともないコンセプトで最初はびっくりしましたよ。私は、それまではイギリスの製品も取り扱ったりしていましたが、デザインとファンクションでビジネスを考えていて、個人の健康や環境に目を向ける製品というのはコンセプトにありませんでした。ましてや、健康を提案する商品なんて、その頃は薬しかありませんでしたから。当時、健康を語る人は病気がちな人、環境を語るのは学生運動をしている人や宗教関係の方という印象がありました。日本ではそんな風に偏った形でしか表現できていなかったのでしょう。

でも、ニールズヤードの場合は、パッケージもデザインも、非常にスタイリッシュでしたし、その世界観の伝え方は非常にうまいなと思いました。

当時すでに小さな店が2つありました。いまも本店があるコベントガーデンと、ロンドンの北西部にカムデン・タウンというパンク・ロックの発祥の地と言われているすごい場所です。場所の選び方もかっこいいですよね。(笑)

創業当初から、ボトルの色はずっとブルー。化粧品のブランドで、発売当初からパッケージのデザインを変えないのは非常に珍しいことです。

1981年の発売当初から変わらないブルーのボトル。フランスでは通常は劇薬に使われるという。ここにも創業者の斬新さが感じられる

――そうですね。普通は、パッケージやデザインを変えたりして鮮度を保ち、付加価値をつけたりしますものね。

 

梶原さん:でも、ニールズヤードは35年間ずっと変わらないんです。アイテムも、創業当初からの製品がそのまま今でもベストセラーです。こういうのが本当のサステナブルだなと思うんです。発売後も、オーガニック100%にしたり、さらに人に負荷がかからないように配合成分を見直したり、ボトルをリサイクルできるようにしたり、コンセプトは変えずに同じ製品をじっくり進化させていきます。

世の中のほとんどの製品における、短期サイクルの商品開発は、次々に新しいモノが生み出されていくので刺激的です。でも本当は消費者も企業も疲弊させ、ストレスを生んでいる。社会がサステナブルとは逆の方向に進んでしまうのです。

ニールズヤードは、どんどん新しい製品に入れ替え、倍々で売り上げを求めていくスタイルではないので、社員には余計な負荷がかからず、お客様も同じ製品を使い続けられ、品質も向上して、より喜んでもらえるのです。顧客の醸成にもつながります。

色鮮やかなブルーボトルは紫外線を防ぎ、繊細なアロマやハーブの素材を、保存料を使わずに提供することを可能にした。使用済みブルーボトルは全国で自主回収して、店頭でディスプレイに使われたり、リサイクルして様々な形に生まれ変わる

――35年間変わらないというのは、すごいですね。創業者は、「その製品は次世代に残して恥ずかしくないものか」という判断基準を持っていたそうですね。これが重要なコンセプトになっているのでしょうか。

 

梶原さん:ニールズヤードにはもともと、パラペンフリーや、ナノテクは使わないといった細かい基準はたくさんあるのですが、私がそれ以上に素晴らしいと思っているのは、「疑わしくは扱わず」の精神です。これはどんな時代にも大切なことです。疑わしいものは時間が経つにつれてやはりそうだとわかるんです。その時点で科学的にはっきりしていないだけなんです。疑わしいのなら、多少の苦労があっても別の安全なものを選ぶべきなのです。

ニールズヤードは創業当時から、マイクロビーズのプラスチックや、スクラブ剤を使用していません。
短期的に消費者を喜ばせるために疑わしいものを使ってまでも化粧品の売り上げを伸ばしていくという考え方をしていません。「その製品は次世代に残して恥ずかしくないものか」というのは非常に大切なコンセプトだと思っています。

 

――日本でまだそのような認識が無かった中で始められたわけですが、今は消費者の意識も変化してきたと思いますか。特に体につけるものに敏感になってきたでしょうか?

 

梶原さん:弊社の製品に関していただく質問は、内容も質も変わってきたと実感しています。保存料とか添加物の使用、香料についての質問が増えました。とはいえ、世間の消費者の多くは成分が掲載されている裏のラベルを見ないで購入していますね。某メーカーのパラペンが入っている化粧水がすごい売り上げだったりします。肌のこと健康のことを考えるとヨーロッパでは考えられない。

 

――私もそれは不思議に思います。日本では、オーガニックに関心があるような発信している人が増えましたが、まったく需要は伸びていません。実際のところは、高価だから買わないとか、関心と行動にギャップがあるように思います。消費がないと市場は育たないですよね。

 

梶原さん:日本ではそのギャップが激しいですね。例えば、日本人に「美しさの基準は何か」と質問するとシミやシワがなくて、肌が白いことだと回答がきます。イギリス人は健康的に見えるかどうか、エネルギーにあふれているかどうかを美ととらえます。外見だけでなく、その人の生き方、内面性も含めて評価しているのです。

日本の消費や生き方が、外見的評価にいかに基づいているかということなんですね。なかなかこれを変えるのは難しいです。

食に関しても同じです。日本人が興味あるのは、美味しいか不味いかだけ。そして、大抵の人は、有機で丁寧に作られたものよりも、手軽に手に入ったり、メディアで消費を煽られている食べ物を選んでしまいます。たとえそれが添加物入りでもです。

イギリスの食べ物はまずいと言われてしまいますが、農薬や食品添加物の基準は日本に比べてはるかに厳しい。体にはいいものばかりなんです。日本のお菓子は美味しいですよね。美味しく感じさせる添加物がいっぱいだから。イギリスにはそんなおやつはないです。

 

――子どもがそういう物を食べて、本当の味を知らないで育つと、大人になってもそれがスタンダードになってしまう。実は危機的状況なんですね。

お子さんは親御さんが与えたモノに大きく影響を受けながら育ちますから。

 

梶原さん:日本のニールズヤードでも、最近は製品を販売するだけでなく、スタッフがライフスタイルを提供できるようになってきました。例えば、睡眠前にハーブティーをおすすめしたり、マッサージの大切さをお伝えしたりして、ホリスティックな提案をするようになりました。それを求めているお客様が増えたと思います。単純に化粧品を買って表面を整えるだけじゃなくて、心と体、全てをケアすることが大切なのだと、わかりつつあるのだなと思います。                 ーー 後編につづく


梶原建二/Kenji Kajiwara

NEAL’S YARD REMEDIES 代表取締役社長。1956年生まれ。大学卒業後、上場企業に1年、輸入家具メーカーに1年勤務した後、24歳で世界中からデザイン性に優れた生活雑貨を輸入する会社を起業後、新たにニールズヤードレメディーズだけを輸入販売する会社を設立。85年にニールズヤードレメディーズを日本で販売開始。96年に日本初の直営店を恵比寿にオープンし、翌年ナチュラルセラピーセンターを開設。2003年に完成したエコロジカルな表参道グリーンビルは、2014年9月にニールズヤードグリーンスクエアとしてリニューアルオープン。ショップ、カフェ、スクール、サロンからなるビューティの発信地に。

聞き手 三枝 亮 / Ryo Saegusa  株式会社 ギンザのサヱグサ 代表取締役社長。 1967年東京生まれ 。子どもたちの上質なライフスタイルを提案するスペシャリティストアをディレクションする傍ら、都会に住む子どもたちを取り巻く環境の改善に重要性を感じ、2012年「SAYEGUSA GREEN PROJECT」を立上げる。