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2018.03.23

手仕事からはじまるファンタジー Dot to Fantasy

水玉から紡ぎ出される花もよう。ひとつひとつ手作業で作られている花のカタチは、柔らかく愛らしい。
15 年近くSAYEGUSA の手仕事に携わる井上和代さんが水玉から創り出した花は、彼女の優しい佇まいと似ている。

水玉から生まれた花もよう
その手仕事に込められた
優しい佇まいを一着のワンピースに

SAYEGUSAらしい普遍的なスタイルを象徴するこのワンピースは、小さな白い丸襟と裾に向かってふんわり広がるシルエット。その胸元に愛らしい水玉の花もようが施され、SAYEGUSAが大事にする“子どもらしさの象徴”ともいえる一着である。この水玉の生地と出会い、そこから何か創り出せないかとSAYEGUSAが井上和代さんに相談した結果、この花もようが出来上がった。井上さんは、15年近くSAYEGUSAの手仕事に携わるお針子さん。

元々はおせんべい屋さんだったという井上さん。仕事合間に趣味として楽しんでいた手仕事がいつの間にか仕事になっていく。
「私は手を動かす作業が好きで、刺繍、編み物、縫い物、何でもやっていました。そのうち、“こんなことは出来る?”などSAYEGUSAさんからご相談いただくようになって、そこから少しずつ仕事が始まっていった感じですね。今でも何だか不思議なくらい。仕事場まで歩いて15分くらい。毎日歩いて出社をして、一日5時間くらい作業をしています。このワンピースのような刺繍だけでなく、襟の刺繍、ボタン付け、裾のチェーン、カギホックも担当しています。手作業でやった方が美しく仕上がる部分はあるので、そこを担当しています」

細かい作業を毎日5時間。80歳を過ぎた井上さんは「そんなに大したことはしていないのよ。こんな風に聞かれると困っちゃうわ」と恥ずかしそうに笑う。
「私はあまり肩の凝らない人なんです。5時間作業していても肩が凝ったことがないの。昔からずっと針仕事が好きだから、その姿勢に慣れているのかもしれないわ(笑)」

誰かに教わったわけではなく、ただただ好きで続けてきた針仕事。それがいつの間にか仕事に変わってきた。
「教えてもらった経験がないから、人にも教えられないの。自分がやったことを見て覚えてもらうしか出来なくて。針仕事の中では刺繍が一番神経を使います。完成図を常に想像しながら集中しなくてはいけない。でも、出来上がった時の達成感や喜びが最も大きいのも刺繍。だから刺繍作業は特に好きです」

このワンピースの胸元部分は、刺繍技術によって4つの水玉をつなぎ合わせて花もように仕上げられ、難しく時間もかかる。井上さんだけがこの作業を出来る人。
「これは何度もやり直して。試作を重ねてこの形が出来上がりました。水玉の間隔や大きさによって花もようが全く変わってくるんです。そうするとワンピースの印象までが変わってしまう。それに、難しい部分がもうひとつ。子ども服は年齢によってサイズ感がだいぶ変わるので、それぞれこの花もようの面積が変わってきます。どのサイズでも、愛らしい印象になって欲しい。それには、この水玉がピッタリでした」

毎日の針仕事。でも機械ではないからこそ、ムラもあり、何度もやり直す日もある。
「15年やってきても不思議なの。同じ作業なのに、ぱっと出来る日もあれば、何度もやり直さなきゃいけない日もある。それが本当にすごく不思議。どうしても上手く出来ない時はね、休憩しちゃう(笑)。
同じ生地で同じ作業だから変わらず出来るはずなのに、出来が全然違う。なんであんなに違うのかしらねぇ。特にこのワンピースは難しい。決して難しいことをしているわけじゃなく、簡単な動作なんだけれど、針の動かし方次第でズレちゃったり美しくきまらなかったり。ちょっとした針の動きで歪む。家でやっているならそれでもまぁいいか!と思っちゃうかもしれないけれど(笑)、お客さまのことを思うと、納得できるまで何度もやり直します」

針仕事を面倒くさいと感じたり、飽きてしまうことは一度もないそう。
「小さい頃からずっと針仕事が好きでした。でも友達にも針仕事が出来る子は多かったですよ。時代なのかもしれませんね。今は針との付き合いが少なくなったものね。昔はみんなある程度は出来たんです。だから今でも特別なことをしているという気持ちはなくて、好きなことを続けているだけ。ただ、商品になると思うと気が引き締まる思いは常にあります。お店に行って、私がボタンをつけた服や、刺繍した服、そういう服たちが綺麗に並んでいる姿を見ると嬉しくて。店員さんに「これ私が刺繍したのよー!」って話しかけたいくらい(笑)」

職人の手仕事、日本製、そこを大切にし続けてきたSAYEGUSAの想いを、井上さんが愛する針仕事で体現している。「私は大したことはしていないの」と終始恥ずかしがる井上さんが丁寧に手を加えているSAYEGUSAの服。そこにはこの花もようのような優しい気持ちが詰まっている。

SAYEGUSAのドットワンピース
胸元には、井上さんが創り上げた花もよう。そこから柔らかくふんわりと広がるシルエットは、動くたびに裾が揺れ、女の子なら誰でも心弾みときめく。着ているだけで、女の子の心をくすぐるワンピースは、丁寧に作られた特別な一着。

photograph _ tenten(girl)、Yasunori Shimomura[ Shimomura Photo office inc. ](woman)
styling _ Eiji Takahashi[ ACUSYU ] hair & make _ Rie Tomomori[ ROOSTER ]
text _ Maki Kakimoto