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2019.06.27

対談 Green Dialogue vol.10 (後編)

環境保全、環境教育などを通して社会貢献に取り組むさまざまなスペシャリストに、弊社代表の三枝 亮が話を伺う「Green Dialogue」。記念すべき第10回のゲストは、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さんです。末吉さんは、「エシカル消費」の普及啓発活動を行うとともに、エシカルの「案内人」を育成する「エシカル・コンシェルジュ講座」も開いておられます。(撮影:Yoshihiro Miyagawa)

「一部の権力の下に多くの犠牲」

――末吉さんがエシカルを知ったきっかけは何でしょうか。

 

末吉さん:実は、テレビのレポーター時代は、エシカルなんて言葉は知らず、自分のことしか考えない生活をしていました。消費に関しても、背景など気にせず自分の欲しいものを買っていました。

転機はTBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターになったことです。プライベートも含めてですが、75カ国ほど訪ねた中で、自分なりにある共通点が見えてきました。それは、どこの世界も、一握りの権力の下に、多くの人や環境が犠牲になっているということです。

最も胸が痛んだのは、2004年のキリマンジャロです。当時、温暖化の影響で、キリマンジャロの登頂にある氷河が、2010年から2020年の間には溶けてなくなってしまうと科学者たちが警告していました。その氷河の状態を確かめるために登りました。

1900メートル地点で、子どもたちが植林活動をしていたのです。それも、祈りながら木を植えていました。氷河の雪解け水の一部は彼らにとって生活用水になるので、氷河がなくなってしまうことは死活問題、「ぼくたちは登ることができないから、お姉ちゃんお願いね」と言われたことを鮮明に覚えています。

キリマンジャロの頂上についたのですが、氷河は大きく減退していて、その時点で、ほとんど残っていませんでした。自分たちの生活が影響を及ぼしていることを知り、日本でこういうことが起きていることを伝えたいと思い、ライフワークとして取り組み始めました。

神奈川県鎌倉市に住んでいたので、海岸沿いのゴミ拾いを始めたのですが、環境問題は一人がアクションを起こしても、どれだけ意味があるのかなぁ、と自問自答を繰り返すだけでした。

何かいい方法はないかと模索しているときに、フェアトレードを知りました。環境も守るし、生産者にとっても優しい、日本に暮らしながら、途上国の状況を変えていくことができる。これなら私もできると思い、取り組みを始めました。14年も前のことです。

子ども向けブランドとして、何ができるのか話し合った。対談は銀座にある「SAYEGUSA ザ・メインストア銀座」内で行われた

――10年以上も続けてこられたのですね。啓発活動を続けてきて、手応えはどうでしょうか。

 

末吉さん:2015年に国連で採択されたSDGsの影響もあり、この3年で社会の価値観は大きく変わってきたと実感しています。

年に100回以上講演をやらせていただいているのですが、環境や人に配慮しないと、これから先の時代では立ち行かなくなると考えている経営者は少なくありません。この時代の変化に乗らないと、「置いて行かれる」という風潮にさえなっていると思います。

 

――サヱグサが取り組みを始めたきっかけは、お客様の声でした。子どもたちのためのブランドなので、お客様の若返りは早いです。そのため、時代の変化にいち早く気付けたのだと思います。

日頃お客様に接している中で、世の中の、特に若い親世代の消費に対する価値観が刻々と変化していることを気付かせてもらいました。

これからどのように商品の価値を再定義していくのか。会社そのものも変わっていかないといけないのではないかと考えています。

 

末吉さん:こういうことが色々な会社で起きてほしいです。おっしゃる通り、若い人の価値観は大きく変わっています。イベントで出会う高校生からは、「大人はSDGsと言うのはいいけど、ちゃんとやってほしい」「世界共通の目標があるのに、なんで大人は暮らしのなかから変えていこうとしないのか」「今の問題は、私たちが原因でできたわけではない。解決するために大人たちも協力してくれないと不安」などと言われています。

このような思いを持っている若者と大人の橋渡しが私たちの役割でもあるかと思っています。子どもたちの将来の芽を摘まないような社会にしていきたい。

末吉さんはエシカルが当たり前な社会をつくるため次世代の担い手の育成にも力を入れている

――子どもの価値観は小さいときに育った環境に大いに影響を受けるものです。私たちが本業で携わる子どもたちが、20年後の社会を考えられるような気づきときっかけを少しでも与えてあげたいと考え、教育活動にも力を入れています。

その一つが、長野県栄村小滝集落への里山体験ツアーです。小滝は自然環境に恵まれているので、都会育ちの子どもを連れていき、自然の素晴らしさや、それに寄り添った里山の暮らしを体感する機会を年に2回開催しています。ところで、末吉さんはエシカル・コンシェルジュという講座を開いているそうですね。

 

末吉さん:エシカルについて普及啓発できる人を育てる講座なのですが、9年目を迎えました。おかげさまで、今期はあっという間に満席になりました。参加者は、ビジネスパーソン、フリーランス、学生などさまざまですが、共通しているのは、自分たちの所属組織ではなかなかこういう話ができないという悩みを抱えていることです。

思いはあるのに、周囲に仲間がいない、でも、このまま何もしないでいるのは気持ちが悪い、まずは行動の一歩として講座を受けたという人が多いですね。

エシカル・コンシェルジュたちのネットワークを全国につくることで、エシカル消費を普及させていきたいです。究極の目標は、私たちの団体がなくなること、それくらいエシカル消費が当たり前な世の中になったらいいなと思っています。

 

――将来的に解散することが究極の目標なのですね。素晴らしい志ですね。ますますのご活躍を期待しております。本日は貴重なお話をありがとうございました。

終わり

【対談御礼と後記】

今回のテーマはエシカル消費でした。末吉さんがおっしゃるように、消費の背景にはまだまだ、知られていない様々な問題が潜んでいます。まずは知ることから始め、難しい問題、遠い場所の問題と諦めるのではなく、少しずつ出来る事から、身近なところから向き合っていく。自分の消費活動に意識を持つ事が何より大切なのだと、改めて感じました。

私たちはこれからも、子どもや地域を相手にした事業を展開するものの社会的責任として、環境教育や地域社会への貢献をしっかりと果たしていきたいと考えています。


末吉里花 / Rika Sueyoshi  アメリカ合衆国ニューヨーク市生まれ、神奈川県鎌倉市育ち。慶應義塾ニューヨーク学院、慶應義塾大学総合政策学部卒業。1996年度ミス慶應。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。 著書に『祈る子どもたち』(太田出版)。新刊『はじめてのエシカル』(山川出版社)。現在は、日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及を目指し講演を重ねている。日本ユネスコ国内委員会広報大使。

聞き手 三枝 亮 / Ryo Saegusa  株式会社 ギンザのサヱグサ 代表取締役社長。 1967年東京生まれ 。子どもたちの上質なライフスタイルを提案するスペシャリティストアをディレクションする傍ら、都会に住む子どもたちを取り巻く環境の改善に重要性を感じ、2012年「SAYEGUSA GREEN PROJECT」を立上げる。