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2019.03.20

SAYEGUSA×MUSIC 〈インタビュー〉KAJIMOTO 梶本眞秀さん

150周年を迎えるSAYEGUSAの新しいテーマの一つに「音楽」があります。

今年日本開催15回目を迎える世界最大級のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019」に参加します。

子どもから大人まで多くの人々を魅了するこの祭典を企画・制作するのは、同じ銀座でクラシック音楽を中心に様々な活動をされているKAJIMOTOの梶本眞秀さん。

SAYEGUSAが梶本さんとともに、ほんものの音楽を通じて子どもたちに伝えたいこととは。

SAYEGUSAは子ども服を通じて、子どもたちの成長に寄り添ってきました。

TPOというシーン別に装う楽しさだけでなく、手をかけ、選び抜かれた素材を使うことで色彩感覚や素材感など、子どもたちの感性を刺激するモノづくりを心がけています。

その想いを広げ、今年初めて「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019」に参加することになりました。

子どもから大人まで自由に音楽を楽しめるこの祭典に向けて、SAYEGUSAの思いを梶本さんと共有しました。

さまざまな価値観と出会う大切さとは

三枝(SG) いま子どもたちから感じるのは、家庭以外の広い世間との接点です。さまざまな職業があることや、将来進む道に可能性がたくさんあることを知ってほしいし、それを伝えたい。

もし家庭でできることに限界があるなら、SAYEGUSAとして「服」以外でも子どもたちのお役に立てるよう、幅広い選択肢を提供し、体験させてあげたいと考えたのです。

梶本(KJ) 三枝さんがおっしゃったことはとても大事だと思います。父親の背中しか知らないまま大人になっていく子どもは多いものです。

私たちは主に海外からオーケストラやアーティストを招聘し、クラシックコンサートを主催しています。

初代の父の頃、クラシック音楽は非常に啓蒙的であり、学ぶものという扱いで、初心者が気楽に行ける雰囲気ではなかったんですね。二代目の私はヒッピームーブメントの真っ只中、ボストンの大学に留学し、ボブ・ディランやジョーン・バエズなどのフォークやロックを浴びていました。

帰国して家業を継いだ時に、クラシックの世界が閉鎖的なことにとても驚きました。そして啓蒙から楽しむものへ、誰もが入りやすいロックコンサートのような雰囲気に変えたいと思うようになったのです。

EDUCATIONのほんとうの意味は

KJ)日本では教育がときに啓蒙になってしまうことがあります。音楽教育でいえば、小学校の教科書にベートヴェンの第九が載っているからクラシック=ドイツ音楽と植え付けられて、フランスのドビュッシーやラヴェルの曲は“そういうのもあるよね”という扱いを受けてしまう。教育が可能性を見せずに、ある一定の方向を押し付けた結果、啓蒙になったもっともわかりやすい例です。

例えば子ども服なら色や素材を見せて、“麻は綿と違うよね”というように、彼らに触らせなければいけない。あらゆることで子どものイマジネーションに託すことが大切です。彼らが何を選択するかは、それぞれの子が持っているポテンシャルだと思うのです。

SG)そうなんです。体験が大切です。

KJ)私は音楽で、三枝さんは洋服で体験を提供できます。しかも三枝さんは洋服から子どもの未来を考えていき、ついにはお米づくりを応援する事業も始められた。

本業と一見関係ないようですが、感性を磨くことのできる体験の場は、絶対に大切です。私は、大人や先生による価値観のおし着せではなく、選択肢を示して、“あとはあなたたちがえたら”と子どもを導くことが必要だと思うんです。

SG)英語のEDUCATIONを日本語に訳すと“教育”になりますが、もともとは“力を導き出す”というラテン語が語源だと教わりました。この語源通りのEDUCATIONの場をつくり、子どもたちに世界の広さを知ってほしいし、そのお役に立ちたい。

5月の「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019」への参加は、私たちにとって音楽のEDUCATIONの第一歩であり、とても楽しみです。

写真左/「0歳からのコンサート」では、子どもたちがのびのびと楽曲を楽しめるだけでなく、アーティストたちと触れあう機会も。中央/さまざまな音楽体験を間近にできる「こどもたちの音楽アトリエ」。 右/ ゴールデンウィークの3日間、クラシック音楽で満たされる東京国際フォーラム。 ©teamMiura

「ラ・フォル・ジュルネ」の魅力とは

KJ)「ラ・フォル・ジュルネ」はフランスの港町ナントで、ルネ・マルタンという音楽プロデューサーが1995年に始めたクラシックの音楽祭です。クラシック音楽の新しい楽しみ方を提供できる革新的なプロジェクトを見つけたいと思い、視察していた時に出会いました。ロックフェスティバルのように、30~40万人以上もの人が会場に集まって、チケットは売り切れ続出。無料コンサートの奏者は入れ替わり立ち替わり。会場ではお客さんも指揮者もアーティストもみんなリラックスして楽しそうなことに感動しました。「ここで起きていることを日本に持っていきたい」という私の思いをルネに伝え、2005年日本開催が実現したのです。第1回から東京国際フォーラムのチケット売り場には長蛇の列ができるほどの盛況ぶり。すぐに翌年の開催が決定しました。

SG)ルネさんも梶本さんのように、もっと一般の方にクラシックを、という想いをお持ちで、それが音楽祭の原点になったんでしょうか?

フランス・ナントのラ・フォル・ジュルネ。音楽は国籍や人種を超えて感動をわかち合える共通言語だ。© La Folle Journée de Nantes

 

KJ)はい。ある時英国のロックバンド・U 2のコンサートに行き、何万人も集まっている会場に衝撃を受けた彼は、こんな風にクラシックを聴けるコンサートを開催したいと思って「ラ・フォル・ジュルネ」を始めたそうです。今では日本以外にもロシアやポーランドなど、世界中に広がっています。

SG)僕自身3年前に初めて訪れまして、日本でもこのようにカジュアルな楽しみ方をするクラシックコンサートがあることに驚きました。同時に、会場の熱気やにぎわいを、子どもたちにぜひ体験させてあげたいと思ったのです。今年SAYEGUSAは、「こどもたちの音楽アトリエ」というプログラムの一環のワークショップ企画などで初参加します。梶本さんと新しい発信ができることが非常に楽しみです。

KJ)洋服と音楽。手法や分野が違っても、融合しながら発信していきたいですね。今回のプロジェクトはその良いきっかけです。お客様が、“この時代に生きていてよかったな、ここにいられてよかったな”と感じてもらえる時間になればと思っています。

梶本眞秀(かじもと・まさひで) 株式会社KAJIMOTO 代表取締役社長

1951年、兵庫出身。1975年、マサチューセッツ州クラーク大学卒業。ポピュラー音楽の仕事に携わった後、梶本音楽事務所(現KAJIMOTO)入社。1992年、代表取締役社長に就任。年間を通じて、海外からの数々のトップ・アーティスト、アンサンブル、オーケストラを招聘するとともに、数多くの優れた演奏家を日本国内に加え、海外にも広く紹介している。また、世界最大級のクラシック音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」を展開している。2019年2月、フランス共和国芸術文化勲章コマンドール受章。www.kajimotomusic.com

illustration_Kanako Okamoto photograph_Yohihiro Miyagawa  text_Aya Ogawa