2018 03.29 (木)

角野栄子さん×幅允孝さん トークショー

3月25日(日)、ザ・メインストア銀座では、『魔女の宅急便』の原作者・角野栄子さんと、ブックディレクター・幅允孝さんのトークショー《魔法をひとつ、あなたにも》を開催しました。

多くのお客様からの参加応募、誠にありがとうございました!
今回、抽選にはずれてしまったお客様は、大変申し訳ございませんでした。

当日の様子をブログにてご紹介させていただきたいと思います。

トークショーでは角野さんに、子どもたちと本の関わりについて、また、ご自身の創作についてお話を伺いました。

角野さんと本や物語との最初の出会いは、戦前、角野さんが5歳の頃。お母さまが亡くなり、お父さまが角野さんらご兄弟を寝かしつけるためにしてくださった、読み聞かせやお話だそうです。

ちょうどその頃、角野さんはサヱグサで洋服を仕立ててもらったことがあったそうです(!)
オレンジ色のちぢみの絹に、緑と白の小花が散っているワンピース。
なんと、その時のお写真がこちら!
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80年近くも前のことですが、とても嬉しかった記憶とのことで、でも鮮明に覚えていらっしゃるそうです。この写真の直後、幼くしてお母さまを亡くし、2年後には優しかったお父さまが戦争に出征してしまった。その寂しさからか、頭の中で物語を考えることをするようになったとお話される角野さん。ご自分を主人公に、家出をするお話を想像していたそうです。『魔女の宅急便』の原点なのかもしれませんね。


1970年、20代にブラジルで過ごした経験を物語にした『ルイジンニョ少年~ブラジルをたずねて~』でのデビューをきっかけに、角野さんは「読む人」から「書く人」になりました。この時から、書くことが次第に面白くなってきたそうです。

角野さんの代表作の一つでもある『魔女の宅急便』。
このお話は、角野さんのお嬢様が12歳の頃に落書きをしていた‟絵”がヒントになり、20年以上にわたる創作がスタートしたそうです。
そこには、草部分が三つ編みにされリボンがついたホウキに、ラジカセをぶら下げ、月に向かって飛んでいる魔女と猫の絵が描かれていました。お嬢様がこの絵を12歳の時に描いたことから、魔女の宅急便の主人公キキも12歳になりました。

1985年に1巻目を執筆。その4年後に宮崎駿監督により映画化されました。この映画は誰しもが一度は観たことがあるはず。テレビでも何回も繰り返し放送されるほど大人気ですよね!実写版ではなんと角野さんご本人も少しだけ登場、またナレーションもされています!

 

ここで角野さんご本人による『魔女の宅急便』の朗読がスタート。優しい声が響き渡りました。

「お子さまが本を読むとき、黙読もいいけど音読もいいと思います。」と幅さん。

角野さんは、「私が小学校1年生の時、教室で<桃太郎>を声に出して1冊読み切った時の喜びを今でも覚えています。」と話します。

「インターネットで何でも調べられる時代、何でも分かったような気持ちになるけど、電源が入らないところで何を覚えているかが大事。身体の一部になっていることが大事だと思います。本は即効性より遅効性。」と幅さんがお話されると、

「読んだからってすぐに身になるものではないけど、重ねていくうちに自分の中に辞書ができると思うの。読んだとおりに使えなくても、その人のものになって、表現に移っていくと思う。人と話すときにも豊かな会話ができるって、素敵じゃない?」と角野さんも本と触れ合う素晴らしさを伝えてくださいました。

(幅さん)
「本を読むことを学校ではなかなか教えてくれません。読み始めたら、最初の一文字から最後の一文字まで読み切らなきゃいけないような、恐怖感とか、義務感とか、勉強として取り組むような、堅苦しいように感じるかもしれないけど、実際はそんなことはありません。」

(角野さん)
「最初の2~3ページは面倒くさいと思うかもしれないけど、そこを越えると読んでる人がその中に入り、主人公と一緒になることができるから面白くなります。そして最後まで読めると満足感がありますよね。読者のお子さまから「本が苦手だったけど読めました!」とお手紙をもらうと、読めたことがとても嬉しかったんだろうなぁと思います。嬉しいと人に話したくなる、もしかしたら何か書きたくなるかもしれない。クリエーションにつながると思うんです。」

(幅さん)
「自分を入り込ませる隙間が本にはあると思います。余白がたっぷり。主人公の横にすっと入り込むことができるんですよね。今のように映像の力が強く、視覚的なものがもてはやされる時代は、パッと見た印象に引き込まれがち。でも、しばらく本を読み続けてみると、誰かが作った映像よりも、自分の頭の中で、パッとビジョンが浮かぶようになる。小さい頃にそういう瞬間に到達していると、そのあと本を読むことがストレスではなくなり楽しくなると思います。」

(角野さん)
「お子さまを誘ってください!お母さんたちは熱心にただただ黙って本を読む。「何読んでるの?」と聞かれたら「すっごく面白い本」と言い、「見せて」と言われたら見せない(笑)。誘う。読みなさいと言われれると、子どもってお腹いっぱいになっちゃうのよね。」

また、1979年に始まった有名な『小さなおばけシリーズ』。昨年、37弾目が発売されました。幅さんは、その1作目『スパゲッティが食べたいよう』の冒頭を暗唱できるくらい好きだそうです。

ですが、最近では『スパゲッティが食べたいよう』などの幼年童話が売れなくなった、話す角野さん。「文字は大きいけど、面白い物語。自分で本を読むようになる架け橋なのが幼年童話です。絵本からいきなり児童文学書を読むことはありません。是非、幼年童話を読んでください。」

最後に、角野さんは来場者の方々にメッセージをくださいました。「これからも、楽しみながら一生懸命楽しい本を書こうと思っています。本は勉強ではないので、それぞれが楽しんで。自由な世界なので。楽しんで読んでほしいと思います。」

 

その後、質問コーナー、そしてサイン会を開催。一つ一つ丁寧に、可愛い絵付きでサインを書いてくださいました。写真撮影や握手にも笑顔で受けてくださる角野さんは本当に素敵でした。

イベントの翌々日、児童文学の分野で世界的に最も権威のある、
「2018年国際アンデルセン賞」の作家賞に、角野栄子さんが選ばれた事が発表されました!
日本では1994年のまどみちおさん、2014年の上橋菜穂子さんに続く三人目となるそうです。
このタイミングでご本人から直接様々なお話を伺えたことは、とても貴重な体験となりました。

 

角野さんからは、心から本を書くことが大好き!という気持ちが終始伝わってきました。そして、子どもたちにも本を楽しんでほしい!という気持ちも。これからも永年に渡り愛され続けるであろう角野栄子さんの作品たちを、是非、お子さまにもお伝えくださいね!

 

<お知らせ>
ザエグサでは、5月6日(日)まで、《角野栄子フェア》を開催。数多くの角野さんの著書の中から、幅さんに選んでいただいたとっておきの作品を販売いたします。サイン本もご用意いたします(サイン本は数に限りがございます)。

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