<対談> 高橋 あず美さん

2024.04.22

<対談> 高橋 あず美さん

シンガー・高橋あず美さんが語る
人との巡り逢いがくれた運命を変えるチャンス

2024年体験プログラムのナビゲーター、シンガーの高橋あず美さんをゲストに迎えた対談をお届けします。2019年、ニューヨークの伝説のアポロシアター・アマチュアナイトで最高得点を記録、日本人初の年間チャンピオンとなった高橋さん。その小柄な体から繰り出されるパワフルでソウルフルな歌声が、数多くの観客を魅了し続けています。幼少期からの体験や人との出会いが彼女の人生とキャリアにどのように影響を与えているのか、SAYEGUSA代表の三枝が探りました。

Photo : Kazuki Matano

高橋 あず美(Azumi Takahashi)

シンガー、音楽家。長野県松本市乗鞍高原出身。乗鞍高原と沖縄県座間味島の観光大使を務める。国立公園内にあるの標高1500mにある我が家で自然と戯れ、合唱部とスノーボード、クロスカントリーで肺活量と体力を育て、147cmの身長とはギャップのあるパワーある声を身につけたと本人は想っている。高校卒業後、東京の音楽専門学校へ入学し本格的に歌について学ぶ。卒業後の2008年にDREAMS COME TRUEのツアーオーディションに合格しバックコーラスとして参加しミュージシャンとしてのキャリアが始まる。その後数々のアーティストのレコーディング、ツアーなどに参加。 同時にソロ活動を開始。楽曲リリースやワンマンライブを意欲的に行う。2018年6月に2週間新たな自分探しのためにアメリカ旅行へ。旅の途中NYの地下鉄でストリートライブをするチャンスが訪れ、多くのニューヨーカーを歌の力で立ち止まらせ歓喜の声を沸かせた。その時の動画をTwitterにあげると一気に再生数が60万回を越える。これをきっかけにNYのパフォーマーの登竜門アポロシアターで毎週水曜日に開催されるアマチュアナイトに参戦し、4回のステージを勝ち抜き2019年の年間チャンピオンとなる。日本人シンガーが1位となるのは史上初。同時期に映画『キャッツ』の憧れのジェニファー・ハドソン演じるグリザベラ役に日本語吹き替え版キャストとして抜擢され、名曲「メモリー」を歌唱。この2つの功績を称えられ、2020年松本市文化芸術大賞受賞する。

三枝:先日、あず美さんがツアー参加されているAIさんのコンサートに伺い、「奇跡」と称されるあず美さんの歌声を生で聴くことが出来ました。まだその興奮さめやらぬ中ですが、今日はあず美さんがどんな幼少期を過ごされ、どんな経験をされて今があるのか、ぜひお話を聞かせてください。


高橋:私は乗鞍高原で生まれ、そこで中学まで育ちました。乗鞍は行楽地として有名でハイキング客やスキー客で賑わっていました。私たちの親世代は活発で、お祭りやイベントが頻繁にあったんですね。子どもたちは「コール乗鞍キッズ」というコーラス合唱団を組んで、松本市で開催された信州博覧会(1993年)でもネイティブアメリカンの方々と交流して歌を唄うなど、人前に立つ機会がたくさんありました。


三枝: 美しい自然に囲まれて育ったのですね。信州は美しい自然だけでなく、音楽や芸術にも力を入れている観光地という印象があります。そのコーラス合唱団は地域振興の一環として結成されたのですか?


高橋:そうですね。私の同級生の両親は宿業を営むなど観光業に携わる人が多く、ペンションをしながらピアノや歌の先生をしたりしていて。小さな村だったので、習い事の先生は友達のお母さんというような環境でした。そんな中で乗鞍の子どもたちが招集されて出来た合唱団なので、歌いたい子が入り、週に一回くらいの練習をしていました。

何より、私が音楽を好きになったのは多分、両親が大好きなビートルズやカーペンターズの音楽を聴きながら育ったからだと思います。言葉はわからないけれど聞こえたままに歌うのが自然と好きになっていました。母は私に音楽系に進んでほしいと密かに願っていたらしくて、私が歌を好きになって「よしっ」って(笑)。だから、ピアノや合唱をどんどんやらせてくれた。お祭りなどで、人前で歌う機会が周りの人より多かったと思います。それがとても楽しかった。好きとか嫌いとかの前に、気づいたら舞台に出されていた感じなので(笑)いつのまにか、歌うことが自分の一部となってましたね。ちょっと気が進まない時も、一旦ステージに出ると楽しくなるんですよね。

人前で歌うことも好きだけれど、声を出すこと、素晴らしい歌声を聴いて感動することに、幼少期から強く惹かれるものがありました。カーペンターズのカレンの歌声とか、言葉にできない何か特別な魅力があって、ただ聴いていたいと思うだけでなく、自分でもあのように歌いたいと強く感じさせられました。心を打たれるような歌声に出会って、それが幼い頃の私の中で何かを動かしたんです。


三枝: 上質な音楽がご家庭に流れていたことと、乗鞍のコーラス隊の存在が、今のあず美さんを作ったんですね。


高橋: 「コール乗鞍キッズ」で童謡やクラシックを歌っていたのと並行して、ソロになりたての安室奈美恵さんを好きになって、ポップスの世界に引き込まれました。カラオケにも連れて行ってもらえるようになって。家族も音楽好きで、カラオケは家族行事のようなものでした。そこでひたすら歌ってました(笑)。


三枝: なるほど。楽しそう(笑)。そこから歌うことへの探求が始まったんですね。


高橋: でも、今の私のソウルフルに歌うようになったきっかけは映画でした。映画音楽にすごく影響を受けましたね。小学生の時に観た『天使にラブソング2』で、ウーピー・ゴールドバーグやローリン・ヒルなど素晴らしいアーティストたちを知って、「世界にはこんなすごい人たちがいる」と、世界に目を向けるようになりました。


三枝: 小学校の頃に?早いな〜。

高橋: ええ、ディズニー映画の音楽もそうですし、『タイタニック』でセリーヌ・ディオンを知って、あの曲を猛練習したり。他にも『ボディガード』のホイットニー・ヒューストンとかマライア・キャリーなど、パワフルな歌声で感動を与えてくれるディーバ達の存在が、小学校高学年から中学校時代の私の心に強く響いて。「こういう歌い方できたらいいな」って憧れを持ちながら乗鞍の山の中で歌っていましたね。


三枝: 海外のアーティストでディーバと言われている方たちの中でも、どっちかというとソウルフルな。


高橋:ええ。ソウルって魂ですよね。子供ながらにそこに何かしらのパワーを感じていたのかな。


三枝:そこから音楽の道へ一直線に?


高橋: 実はその頃はまだ音楽を仕事にしたいとは思っていなくて、動物関係のお仕事につきたいなって思っていました(笑)。でも結局、ずっと合唱団は続けていましたし、中学では合唱部、高校では軽音楽部に入りバンド活動を続けていて。いざ高校卒業を控えて改めて自分の将来の進路を考えたときに、音楽が自分の人生で一番長く続いているものだと気づきました。

「まだ明確に音楽で何をしたいかはわからない。けど多分私は音楽を続けていきたい。音楽のことを勉強したい。」ということで、高校卒業後は東京の音楽の専門学校へ進みました。そこで、ゴスペル音楽に深く没頭して、自分が理想とする歌声をみっちり作り上げることが出来た3年間だったんです。最高の先生方に恵まれて、すごくいい環境がありました。ニューヨークの教会で歌う海外研修があったり、ニューヨークのゴスペルシンガーが来日して授業をしてくれたり。


三枝:まさに本物を見て、本物の体験をしたんですね。


高橋:本物の人たちに教わったし、教会に行ってお祈りしている人の前でゴスペルを歌って、その人たちが涙してくれたり。自分たちの歌に本気で感謝してくれている姿を目の当たりにするっていう経験は、まだまだ自分は無力だけれど、もっともっと上手くなりたいなって思わせてくれました。そんな3年間だったんです。


三枝: それで、音楽の道へと本格的に進まれたんですね。地下鉄で歌っていらっしゃる動画を拝見しましたが、お一人でチャレンジされたんですよね?正直、驚きました。自分には一生できない経験だと思います。


高橋: 基本的には一人で行動するタイプですが、あれはいろいろなミラクルが重なって、人との出会いが作ってくれたチャンスだったんです。一人では決してできなかった。でも、「あなたならやれるよ」と背中を押してくれる人が側にいてくれて、それであの環境出来上がったんです。

話は長くなりますが、24歳のとき、初めて一人でアメリカを旅したんです。ニューヨークに着いてゲストハウスに泊まりました。そこで、メロディという名の黒人女性に声をかけられて仲良くなった。彼女も音楽が好きで、ダンスもやっていてアメリカ在住だけど、アメリカ中を旅していて。NYに住んでいたことがあったらしく、色んな所に連れて行ってくれたんです。彼女のおかげで楽しい経験をさせてもらったので、そのお礼にと、セントラルパークで「アメイジング・グレース」を歌ったんです。そうしたら彼女が急に「あなた、こんなとこで歌ってる場合じゃないわ」って私の手を引っ張って地下鉄に連れて行くんです。
で、「はい。歌いなさい」と(笑)。はじめは「そんな、いや、無理!」って。でも、彼女が大きな声で「Ladies and Gentlemen!彼女が今からここで歌うわ!」って話し始めて、みんなの注目が集まってしまって。もう歌うしかないと観念し、「アメイジング・グレース」をアカペラで歌ったら、ホームレスの人が掛け声や拍手をしてくれたり、通りがかりの人がちらほら立ち止まって聞いてくれました。終わると「next!」って、8か所くらいの駅に連れて行かれて(笑)。終いには、タイムスクエアのThe New Yorkっていうミュージカルエリアがありますよね?あそこで「歌え」って言われて、またメロディの「Ladies and Gentlemen!」が始まるっていう(笑)。

高橋:半分呆れながらも、彼女がいなければ、こんな経験は絶対できていないとものすごく、心から感謝しました。「また会えたらいいね」と別れてから8年後の2018年、再びのアメリカ旅行で、メロディと再会を果たしました。たまたま電車に乗ろうとした時にストリートライブをやっている女の子を見かけて、メロディが「アズミ、ちょっと歌わせてもらおう」って、その子に声をかけちゃって(笑)。「日本からやってきたシンガーがいるんだけど、1曲歌わせてあげて」って。それがあの動画なんですよ。


三枝: メロディさん、相変わらず(笑)。その時、どんなことを感じましたか?


高橋: ええ、24歳の時と32歳の時、同じニューヨークの地下鉄でも、オーディエンスの反応、ノリ、立ち止まり方、共鳴してくれている様子、すべてが明らかに違う。8年間の自分自身の成長を感じさせてくれました。心の成長も。そして、それを感じるきっかけをくれたのが「人」だったんです。


三枝: 人との出会いがあず美さんの人生に大きな影響を与えているようですね。


高橋: 自分でチャレンジすることも大切ですが、そういう人と巡り逢えるチャンスを掴むというか。


三枝:セントラルパークでメロディさんへのお礼として歌ったのがすべての始まりでしたね。メロディさんは、その場で何か特別なものを感じ取り、「行くわよ」と即決しました。人間関係では、ただ人を大切に思うだけではなく、相互に影響を与え合う瞬間が存在します。そのため、自らも何かを行動に移さなければ、何も返ってこないのです。そのシンパシー、つまりメロディさんとの共鳴が、あず美さんにとって人生を変えるほどの重要なものだったということでしょう。


高橋:本当に変えてくれた存在です。


三枝:やろうと狙ってできることじゃないですね。偶然が重なって必然になるみたいな。


高橋: そうですね。アメリカへの旅を決心した自分の行動がなければ、メロディとの出会いはなかったと思いますし。だから面白い人に出会えたらいいなって、そういう気持ちをいつも大切にしながら一人旅をしています。一人で行けば必ず誰かと出会うことが出来て、話すチャンスや、その人と行動するチャンスが生まれるから。それが最高に楽しいって、初めての一人旅で気づいて以来、ずっと思っています。


三枝:24歳の時に、恥ずかしいからと止めていた可能性もあったわけですよね。


高橋:でもメロディーがそこで強引に私を引っ張ってくれたおかげで、あの素晴らしい瞬間が生まれたと思うと、その全てに心から感謝するしかないです。


三枝: その後、あのアポロシアターにもチャレンジされて…そうやってシンガー・高橋あず美さんが形作られたわけですね。

高橋: 本当にそう思います。あれをきっかけに、多くのことが作られていったと思います。


三枝:例えば、地下鉄や広場でいきなり歌うような経験があると、度胸が身につくというか、そういった経験が自信につながるわけですよね。


高橋: そうですね。あの動画で上がっている地下鉄で歌った瞬間、私の中で何かが変わりました。自分の殻がガラガラと壊れていく感じがしたんです。止まってくれた人々の反応が、私自身がびっくりするくらい共鳴してくれる人が大勢いて。歓声や、びっくりした顔でずっと立ち止まっている聴いてくれているとか。そういう体験は本当に貴重でした。

 私はその時までは、どちらかというと技術を磨くことを常に大事にしてきましたが、アメリカで歌った瞬間の空気感を肌で感じたとき、技術だけでなく内面、心の成長がいかに大切かを理解しました。目に見えない自分の殻を破ることの大切さです。


三枝:それは高橋さんがこれまでの訓練を積み重ねてきた結果でもありますね。いろいろなことに気づかせてくれる素晴らしいエピソードだと思います。

今はほとんどの人が音楽を楽しんでいて「あの人のこの曲がいい」「流行に関係なく好き」という声をよく聞きますね。音楽が人に与える影響は、歌詞やメロディー、曲そのものにとどまらない深いものがあると思うんです。あず美さんはどのように思われますか?
というのも、こういうご縁がなかったら多分、僕はAIさんのライブに行く機会はなかったと思うんですけども、すごく感動したんです。歌がうまいのはもちろんです。パフォーマンスももちろんです。でもそれだけじゃない。会場全体を包み込むパワーというか、オーラというか。AIさんやあず美さんの歌が、あんな風に人の心を動かせるのって、スキルだけじゃないんだろうな。じゃあ、なんだろうと思って。


高橋 確かに、音楽は人の心に深く響くものですね。私たちはどれだけの技術があっても、人の心に触れる何かが必要です。それが何かはわからないから探し続けたい。永遠の課題だと思います。
今の時代、技術を磨く情報や教材が手軽に入手できるようになりましたね。だからとにかく上手い人はたくさんいるんです。でも全然響かないって人もたくさんいて…。じゃあ、私の歌、もちろんAIちゃんの歌もですけど、人々が感動したと言ってくれるのは、なぜなんだろう。って、いつも考えています。


三枝:本当に、お二人の歌は人の心を動かすものがあります。そういうことが出来る人は、歌にどんな気持ちを込めているのか知りたいんです。


高橋:人それぞれ違うと思いますが、AIちゃんだったら、とにかくすごく人のことを思ってる。本気で世界が平和になってほしいとか、すごく思いを持ってるんですよ。とにかく本心で全部歌ってると思うんです。それって、やっぱり伝わると思う。
私の場合は、人に何かを伝えたくて歌っているっていうよりは、一人旅したり、何かにチャレンジしたりして得た経験、その時感じた悲しみも悔しさも嬉しさも喜びも、自分の中に吸収された全部が良いと思っていて。それが、私が発した声に乗ってて欲しいなって。それでみんなが喜んでくれることに対して、私もすごくハッピーに感じるんです。

三枝:なるほど。ビジネスの世界でも、企画のプレゼンテーションがしょっちゅうありますよね。でも、本当にその内容に心があるかどうか、それが問題です。どんなに言葉を綺麗にロジカルにまとめても、「ふーん」と思われがちです。でも、本気で伝える気持ちは、聴いている人に必ず何らかの形で伝わるものです。
きれいな資料を作ってミスなくプレゼンができたとしても、大切なのはそれだけではなく、間違えたって構わないから、伝わることが重要です。


高橋:そうだと思います。だから、音楽に限らず、それぞれが得意なツールを使って、どれだけ人の心を動かせるかが大事です。そして、そのツールを使う自分自身が、どれだけ良いエネルギー・パワーを持っているかが鍵なんじゃないかな。
音楽は特に、言葉がなくても感動できるところが大きいですね。歌詞やメロディがなくても、音楽そのものに感動するのは、人間の本能的な部分かもしれません。


三枝:純粋に感動できるって素晴らしいことですよね。
少し話は変わりますが、現代の子どもたちの状況について、何か感じることはありますか?時代が大きく変わっている中で、ご自分でチャンスを掴んでいって、いろいろなチャレンジをされているあず美さんから見て、子どもたちに「音楽」とどう接してほしいとか、何かメッセージがあれば教えてください。


高橋:子どもと接する機会は多くないですが、友達の子どもたちと遊ぶときに感じることは、音楽がもっぱら携帯の中でさーっと流れるだけとなってしまっているように思います。何でもそうかもしれませんが、やはり子どもたちには生の音楽、生のライブに触れてほしい、実際に体験してほしいと強く願っています。
それなので、去年から、乗鞍高原の魅力と音楽の楽しさを体験できるイベント『乗鞍高原自然にやさしいフェスティバル』を主宰しています。このフェスの目的は、もちろんお客さんを迎えることも大切ですが、地元の子どもたちが本物の音楽に触れる機会を提供することにあるんです。


三枝:生まれ育った場所への恩返しの意味も込めてですね?


高橋:ええ。自分が子どもの頃にたくさん経験させてもらっていた機会が、今の子どもたちには足りないと感じていて。


三枝:コーラス隊がもうないのですか?


高橋:コーラス隊はありますが、歌う場所が減っています。お祭りも少なくなり、あの頃がんばってくれていたお父さんたちも年をとってしまったので、私たちの世代が繋いでいかなければ、と。将来的には地元だけでなく、他の地域の子どもたちにも歌う機会を提供したいと考えています。
去年はその始まりとして、私のライブで「コール乗鞍キッズ」を舞台にあげてコーラスをしてもらいました。


三枝: それは素晴らしい。


高橋:どのようにつながっていくかは分からないけれど、多くのことを体験することで、「これが好きだ」「これは苦手だ」と自分の好みが明らかになります。体験しないとわからないことが沢山ありますから。だから、素晴らしい音楽も、小さな頃に体験してもらいたいものの一つなんです。

「乗鞍高原自然にやさしいフェスティバル2023」の様子(高橋さん提供)




三枝:確かにそうですね。昔から「親の背中を見て育つ」と言われていますね。親の影響で子どもたちが将来を形作ると。しかし、親の職業や環境、価値観に捉われず、小さい頃からさまざまなモノコトに触れ、驚くほど素敵な体験をして、多様な「引き出し」を増やしてあげることができたら、それが子供たちの将来にとっても大きな差となり得ると思うのです。

あず美さんは、お友達のお母さんにピアノや歌を教わったり、子どもたちがさまざまな経験をすることができる環境があったとのことですが、今はそのような環境が断絶されているように感じます。特に東京の都心部では、声をかけられたら逃げるように言われるほどです。家族の中での独立が進み、祖父母や親以外の大人や地域社会とのつながりも失われてしまっています。しかも少子化で一人っ子が増えている。
そんな時代なので、私たちのような存在が、近所のちょっと変わった、でも色々なことを教えてくれるおじさんやおじいさんおばあさんのような役割になれたと思っています。もちろん、ナビゲーターの皆さまと一緒にです。隣のお姉さんが歌手の高橋あず美さんであったり、10軒先のおじいちゃんが学者の養老孟司さんであるような(笑)。

生き生きとした人生を送る人たちが周囲にいることは、子どもたちにとって非常にプラスになります。養老先生は86歳ですが虫が大好きで、対談中に虫が飛んでいたら追いかけていってしまうほどです(笑)。そのようなチャーミングで探究心のある人がいることが、子どもたちにとっては大切なのです。
今の保護者たちは、子どもたちの安全を第一に考えるがあまり、つい過保護になることもあります。先回りの心配をして、無意識に子供たちの行動を制限してしまうことがありますね。しかし、子どもたちにもっと自由を与え、さまざまな経験をさせてあげることも大切だと思います。


高橋:そうですね、私ができることは、子どもたちに歌うことの喜びを提供することです。それが子どもたちの人生にどう影響するかはわかりませんが、彼らにとってプラスになることを願っています。


三枝:2024年は、あず美さんとのご縁をいただき3つのプログラムを企画しています。小さい頃のあず美さんのように、音楽の素晴らしさを知り、声を存分に出して自分を解放する喜びを感じてもらえたらと思います。その結果、子どもたちが音楽に興味を持ち、もしかすると一生涯の趣味や夢を見つけるかもしれません。たとえば、あずみさんのようなアーティストに憧れたり、音楽の道を選ぶ子も出てくるかもしれません。
今日、あず美さんについて改めてお話を伺い、本当に、他には代えがたい素晴らしいナビゲーターだと再認識しました。ですから、参加する皆さんがフレキシブルに自由に楽しんでいただきたいと思います。最終的には、参加者全員が音楽の楽しさを感じて帰ってもらえれば、それに勝る成功はないですよね。
今日はありがとうございました。



高橋:プログラムで子どもたちに会えるのを楽しみにしています。

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